今や「ウイルス」と言う言葉を聞くと、コンピュータ・ウイルスを第一に思い浮かべる人も多いのではないかと思う。
コンピュータ・ウイルスは現実世界の「ウイルス」に似た特性を持っていて、それ自体では生きる事が出来ず、プログラム・ファイル等(生命体)に寄生する事によってのみ種?の保存ができるコードの事をそう呼んだ。呼び名の付いた当時からそれ以外にワーム、トロイの木馬等の不正プログラムがあったが、「自己伝染機能」「潜伏機能」「発病機能」があるコードを特に「コンピュータ・ウイルス」と呼んで、他と明確に区別をしていた。この機能の区別から言うとワームは自己伝染機能のみのプログラム、トロイの木馬はそのどの機能もなくてユーザを騙してインストールさせて何らかの不正を働くプログラムの事を言う。
ただ多種多様の不正コードが存在する状況になった現在では、この区別は有名無実になりつつある。現在だと「アドウェア」「ランサムウェア」等も頻繁に流行するし、また標的型攻撃に用いられるプログラムは多機能で単純な分類は出来ない状況になっている。これ等すべてをマルウェア(不正・悪性ソフト)と呼ぶのが正しいのかもわからないが、ウイルスと言う呼び方が一般化した現在、定義に拘らずに一括して「ウイルス」呼んで良くなってしまっているのではないだろうか。
筆者紹介

岸田 明(きしだ あきら)
KMSコンサルティング代表。
大手IT企業や参議院事務局など、第一線でサイバーセキュリティ対策に携わってきたこの道のエキスパート。 2016年3月よりキューアンドエーワークス株式会社の顧問に就任。